GBI法、上顎洞底挙上術
顎の骨が足りない方もGBR法や上顎洞挙上術によって骨を再生させることでインプラントが可能になることがあります。以下にその手法をご説明いたします。
GBR(Guided Bone Regeneration)
GBR法は骨が足りないところに自家骨(ご自身の顎の骨を採取し集めたもの)や人工骨(β TCPやバイオスなどの人工的な骨の顆粒)を移植し、その表面を生体膜で保護することによって顎の骨を再生させる治療法です。
骨の欠損の量により術式が異なります。
骨がわずかに足りないだけであればインプラント手術を行う際に自家骨を欠損部分に補填します。しかし骨の欠損部分が大きく、自家骨だけでは足りない場合は人工骨を併用します。
また移植した骨が治癒期間に動いてしまうと正着した骨が再製されませんので、人工骨を保護する人工膜を使用することがあります。
移植というと移植した骨がご自身の骨とくっつくイメージがあるかと思いますが、多くの場合は一定期間が経つと移植した部分が細胞によって吸収され、ご自身の骨となります。
GBRのリスク
- 移植した骨が感染を起こすことがあります。
特に喫煙者や糖尿病の患者様は感染を起こしやすい傾向があるため、GBRはお勧めできません。 - 人工骨などの異物を身体の中に入れることによって、通常のインプラント手術より術後の痛みや腫れが強く出ることがあります。
広範囲に渡るGBRの場合は術後7日ほど腫れたり、場合によっては顔に青あざ(内出血)ができたりすることがあります。こういった症状は2週間程度で必ず落ち着いてきますのでご安心ください。 - GBRを行った部分は骨が固まるまでに3~6ヶ月程度かかります。
その間はかぶせものを入れることができませんのでご了承ください。
上顎洞底挙上術
上の奥歯の根の先には副鼻腔の一部の上顎洞という空洞があります。
通常インプラントは8mm以上の長さのものを入れると安定すると言われているため(複数で連結する場合は6mmでも可能)、上顎洞底までの骨の厚みが8mm以上必要です。8mm以下の部分にインプラントを埋入するには上顎洞底挙上術が必要となります。
上顎洞底挙上術のリスク
上顎洞挙上術は上顎洞という空洞の内部に骨を転入する手術です。
そのため術中に上顎洞内の粘膜が破れてしまったり、元から上顎洞内に炎症がある方(鼻炎や蓄膿症など)は術後に感染のリスクが高くなります。上顎洞底挙上術後に感染が波及すると重度の上顎洞炎となり、長期的な抗生物質の服用や耳鼻科での外科的な治療が必要になることがあります。
こういったリスクを軽減させるため、CTでの術前の耳鼻科的な診断が重要になります。インプラントだからと言って顎の骨だけを診るのではなく、上顎洞内の炎症状態や形態などを歯科医師が熟知していないと上顎洞底挙上術が禁忌の患者様に手術してしまうことがあり、大きなリスクとなり得ます。
上顎洞底挙上術には以下の2つの方法があります。
①ソケットリフト
ソケットリフトは比較的ご自身の骨がある場合に適応されます。
従来はインプラントを入れるために開けた穴からオステオトームという器具を挿入し、骨を搥打することで挙上していました。しかし最近では様々な器具が開発されており、当院ではSCAキットという専用の器具を用いてオペを行っております。この方法は従来法と違い骨を搥打することがないため、患者様の不快感が少なく安全に骨を増やすことが可能になりました。従来の方法でソケットリフトを行うにはご自身の顎の骨が4~5mm程度必要でしたが、このキットを使用すれば3mm程度しか骨のない患者様にもソケットリフトで対応できる場合があります。
②サイナスリフト
ご自身の顎の骨がかなり少ない場合、サイナスリフトを行います。
サイナスリフトは上顎の側面から穴を開け、そこから上顎洞底粘膜を剥離、挙上をしていきます。
この方法は手術範囲が大きくなるため、術後の痛み、腫れが強く出ることが多いです。通常は手術時に静脈内沈静法を併用し、眠った状態で手術を行います。
ソケットリフトではそこまで大きな問題が起きることはありませんが、サイナスリフトでは慎重に診断し、必要があれば事前に耳鼻科の受診をお勧めしております。
ソケットリフトとサイナスリフトの比較
ソケットリフト | サイナスリフト | |
術後の腫れ、痛み | 通常の手術に比べ大きな差はない | 術後に腫れや内出血が強く起こることがあり、落ち着くまでに2週間程度かかる場合がある |
難易度 | 比較的高い治療技術は必要としない | 高い技術や経験が必要である |
適応範囲 | ご自身の顎の骨が一定量あることが条件 | 条件なし |