インプラントには長さ、太さ、素材、表面性状など様々な違いがあります。各患者様の顎の状態や噛み合わせなどによって、適切なインプラントを選択することが長期的な成功に繋がります。
以下にインプラントの違いをご説明いたします。
インプラントの材質
インプラント体はチタンまたはチタン合金でできています。チタンは生体親和性が高く、骨と強固に結合することがわかっています。また金属の中でもアレルギーが出にくい材質のため、身体の中で長期的に使用できる優れた素材です。
最近では金属不使用で金属アレルギーの心配がないジルコニア製のインプラントも使用されるようになりました。
かぶせものは金合金、チタン、コバルトクロムなど金属でできたものから、金属を一切使用しないセラミックやジルコニアなどがあり、部位により適した素材が異なります。
インプラントの太さ、長さ
インプラント体の大きさは直径3~5mm、長さ6~18mmと種類があります。なるべく太く長いインプラントの方が丈夫なイメージがあると思いますが、顎の骨の状態によって適正なサイズのインプラントを入れることが重要です。
一般的には長さ10mm前後、直径4mm程度のインプラント体を使用することが多いです。
インプラントの表面性状
インプラント体の表面には骨と結合しやすくするため様々な処理が施されおり、構造の粗さ(凹凸具合)や化学的性質、荷電などに違いがあります。またインプラントのネジの溝部分には深さや幅などそれぞれ微妙な違いがあり、インプラントの成功率に影響を与えると考えられています。こういった微妙な違いによって骨とインプラントの結合率や、結合するまでの時間が変わるため、大学や研究機関、メーカーが日々開発に取り組んでいます。
インプラントの長さは何ミリ以上必要なの?
かつてはインプラントは長い方がもつと考えられていたため、現在に比べ長いインプラントを使用していました。しかし顎の骨の中には血管や神経などがあるため、長いインプラントを入れるということは、解剖学的なリスク(出血や神経麻痺など)があります。
現在ではインプラントの長さと予後(術後の経過やもち)について様々な研究がなされ、8mm以上のインプラントであれば生存率に差はないと考えられています。そのエビデンスとして以下の研究を紹介します。
4591本のストローマンインプラントの10年予後調査 French D2015
インプラント長径 | 累計生存率 | 有意差 |
---|---|---|
10mm | 99% | あり (6mmが有意に低い) |
8.0mm | 98% | |
6.0mm | 96% |
長径3mmのインプラント埋入部位 | 累計生存率 | 有意差 |
---|---|---|
上顎臼歯部 | 87% | あり (上顎臼歯部が有意に低い) |
下顎臼歯部 | 99% |
この調査では4591本のストローマンインプラントの埋入10年後の生存率(お口に残っている割合)を調べています。
ストローマンインプラントの長さは6mm、8mm、10mm、12mm、14mmと種類がありますが、その中で8mm以上の長さがあるインプラントでは、「長さに関わらず生存率に差はない」というデータがでています。一方で6mmのインプラントは8mm以上のインプラントに比べ生存率が有意に低いという結果となりました。
6mmのインプラントは特に上顎での生存率が低いのですが、それでも9割近い生存率ですので、お口の状態によっては6mmのインプラントを選択することもあります。
骨の量が少ない患者様や、解剖学的なリスクの高い患者様には6mmのインプラントの使用も臨床的には行っております。