All on 4、All on 6は、すべての歯、または多くの歯を失ってしまった方に対して、4本または6本のインプラントで全体の歯を支える治療法です。
通常、インプラント治療では、1本の歯を失った場合には1本、2本失った場合には2本のインプラントを埋入します。一方で、3本の歯を失った場合には、2本のインプラントを土台として3本分の人工歯を支えることも可能です。 このように、必要なインプラントの本数を減らすことで、手術による身体的な負担や、治療費の負担を軽減できる場合があります。
オールオンフォーやオールオンシックスでは、通常よりも長めのインプラントを使用することが一般的です。その際、上顎では上顎洞、下顎では下顎神経や舌下動脈など、インプラント埋入時に注意すべき重要な解剖学的構造があります。 従来のインプラント治療では、骨量が不足している場合に骨移植を行う必要があり、治療期間や費用が増えるというデメリットがありました。All on 4、All on 6は、骨移植を回避できるケースが多い点も特徴です。
1990年代後半に提唱されて以降、長期予後に関する臨床研究も数多く報告されており、海外では総入れ歯に代わる治療として広く普及しています。日本ではこれまであまり一般的な治療法ではありませんでしたが、近年インプラントに対する患者様のニーズが多様化し、All on 4、All on 6症例が増えてきました。
All on 4、All on 6は非常に画期的な治療法ではありますが、一方で外科的技術や補綴(かぶせもの)の設計が非常に高度であるため、十分な知識と経験を持つ歯科医師が、適切な設備環境のもとで行わなければ、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。
All on 4
All on 4 の特徴
土台の本数が少ないため、長いインプラントを使用する
神経や上顎洞を避けるため、傾斜して埋入する
All on 6
All on 6 の特徴
All on 4 に比べ短いインプラントを使用する
傾斜はせず、比較的平行に埋入する
All on 4、All on 6のメリット・デメリット
メリット
●埋入するインプラントの本数が少ない
少ない本数で全ての歯を支えるため、身体への負担を抑えられる場合があります。
●骨移植を回避できる可能性が高い
骨のある部分を活用してインプラントを埋入するため、大がかりな骨移植を行わずに治療できるケースが多くあります。
●手術当日に仮歯を装着できる場合がある
条件が整えば、手術当日から固定式の仮歯で食事や会話が可能です。見た目の不安を早期に軽減できます。
●費用を抑えられる可能性がある
1本ずつインプラントを埋入する治療と比べ、総本数が少ないため、全体の費用を抑えられることがあります。
デメリット
●1本あたりの負担が大きい
少ない本数で多くの歯を支えるため、1本のインプラントにかかる力は大きくなります。
●適応に制限がある
噛む力が非常に強い方や、骨の状態が十分でない方には適さない場合があります。
●高度な技術が必要
正確な診断と精密な手術技術が求められる治療法です。
●術後の負担が大きい場合がある
広範囲の手術となるため、通常のインプラント治療に比べて腫れや痛みが強く出ることがあります。
インプラント4本だけで長持ちするの?
エビデンス
All on治療の予後
Malo P, de Araújo Nobre M, Lopes A.
“The All-on-4 treatment concept for the rehabilitation of the completely edentulous mandible: A longitudinal study with 10 to 18 years of follow-up.”
Clinical Implant Dentistry and Related Research, 2019
この研究はAll on治療の第一人者であるMalo先生らの研究です。 数百のAll on治療の10〜18年の予後を調べています。
主な結果
•インプラント累積生存率:約94〜96%
→All on 4は長期的にも信頼性が高い治療と言える
•主要な合併症は補綴的トラブル
→トラブルの多くはインプラント体そのものではなく、かぶせものに関するもの。特に多かったのはかぶせものをインプラント体に固定しているネジが緩んでいたり、人工的な歯が欠けたり削れたりしていた。
臨床的結論
•All on 4は長期的にも信頼性の高い治療法
•成功の鍵は「外科」よりも「補綴設計と咬合管理」
大石の考察
All on 4治療というと外科的技術に注目が集まりやすいが、実際に長期的な成功を左右するのは補綴設計(かぶせもののデザインや咬合管理)であると考えられる。単にインプラントを埋入するだけではなく、どのように力を分散させるか、清掃性をどう確保するか、長期的にトラブルが起こりにくい設計にできるかが極めて重要となる。そのため、術前の段階から手術を行う歯科医師だけでなく、歯科技工士や歯科衛生士も含めたチームで、最終的な上部構造まで見据えた治療計画を立案する必要がある。特にAll on 4では、歯科技工士の技術力や連携の質が、見た目・咬みやすさ・耐久性に大きく影響する。その観点からも、院内に歯科技工士が在籍しているクリニック、あるいは密接に連携できる歯科技工士と日常的に治療を進めているクリニックで治療を受けることが望ましい。
All on 4 と All on 6 の使い分け
骨の厚みや硬さなどの条件が良好で、噛み合わせの力が強くない場合はAll on 4を選択できることもあります。しかし、埋入本数が少ない分、特に上顎ではAll on 6の方が長期的に安定しやすいとされています。
| All on 4 | All on 6 | |
| 咬合力分散 | △ | ○ |
| 長期安定性 | △〜○ | ○ |
| 適応の広さ | △ | ○ |
| 費用(単体のインプラント治療と比較して) | ◎ | ○ |
欧米ではAll on 4が主流ですが、日本人は米や野菜を食べる文化の影響で、歯を横に動かす咀嚼や歯ぎしりのような力がかかりやすく、顎の筋力も強い傾向があります。そのため、4本で支えるAll on 4では、力学的にリスクが高くなる症例も少なくありません。
当院では、費用の安さだけで治療法を選ぶのではなく、将来を見据えた長期的な安定性を重視し、All on 4、All on 6を患者様一人ひとりの状態に合わせてご提案しています。また、専用のオペ室・設備を完備し、事前にお口の情報をもとに最終的なかぶせものまでを見据えたシミュレーションを行った上で治療を開始しています。
診断基準
〈All on 4を選択するケース〉•重度歯周病・長期欠損で骨吸収が進行している
•高齢者・全身疾患を考慮し侵襲を抑えたい
•骨造成を回避し、早期の機能回復を優先したい
•コストと治療期間のバランスを重視したい
〈All on 6を選択するケース〉
•骨量・骨質が十分にある
•咬合力が強い、または若年〜中年層
•長期耐久性・リスク分散を最優先したい
•将来の補綴トラブルを極力減らしたい
All on 4とAll on 6どちらが長持ちするの?
エビデンス
Toia ら(2025年)
多施設ランダム化比較試験(5年間追跡)
この研究は上顎のAll on 4とAll on 6を5年間の追跡調査で比較した研究です。
主な結果
•インプラントの生存率はAll on 4、All on 6に差は認められなかった
ただし、All on 4の方が補綴的トラブル(ネジの緩み・人工歯の破損・修理や調整の必要性)が多い傾向だった
臨床的結論
•4本でも6本でも治療成績自体に大きな差はない
•しかし、6本支持の方が補綴的トラブルが少なく、長期管理がしやすい可能性が示唆
大石の考察
All on 4とAll on 6では、インプラント自体の生存率に大きな差はないと報告されている。 しかし当然ながら、4本で支える場合よりも6本で支える場合の方が力を分散しやすく、上部構造(かぶせもの)の破損や緩みなどのトラブルは少ない傾向にある。 また、All on 4ではインプラント(土台)に問題が生じた際、追加埋入や上部構造の作り直しが必要になるケースがある。 一方、All on 6では仮に1〜2本のインプラントに不具合が生じても、残存しているインプラントで支えられる場合があり、小規模な修繕のみで現在のかぶせものを継続使用できることもある。 そのため、骨の状態や費用面などの条件をクリアできるのであれば、長期的な安定性やトラブルリスクの軽減という観点では、All on 6の方が有利と考えられる。
治療の流れ
STEP 1 相談、簡易検査
CT撮影や全身状態の問診を行います。
STEP 2 精密検査
上下の噛み合わせの位置や歯周病の状態などを検査します。 ご希望があれば初回の検査時に行うことも可能です。
STEP 3 検査結果説明、日程決め
患者様により治療期間や費用が変わるため、検査結果をもとにご説明いたします。 ご承諾いただけたら手術日を決定します。
STEP 4 手術
可能であれば同日に仮歯の装着を行います。
STEP 5 型取り
最終的なかぶせものを作るために精密な型取りを複数回行います。
STEP 6 完成
歯が入ったら積極的な治療は終わりますが、その後1~6ヶ月ごとにメンテナンスを行います。
※2 仮歯で不具合のあった箇所を調整し、最終的なかぶせものに反映させるため、何度かご来院いただく可能性があります。
治療の回数を減らすことは可能ですが、長期的に完成度の高いかぶせものを入れるために複数回ご来院いただくことをお勧めいたします。
よくある質問
Q. All on 4、All on 6は何年もちますか?
A.文献的には10年で90%を超える高い生存率が報告されています。ただし、メインテナンスと咬合管理が不可欠です。
Q. All on 4、All on 6 のインプラントが1本ダメになったらどうなりますか?
A.All on 4では1本喪失すると土台が3本になってしまうため、そのまま維持することは難しいです。そのため、再度インプラントを入れ直し、かぶせものも作り直す必要があります。一方で、All on 6では喪失した部位にもよりますが、最大2本喪失しても土台が4本残っているため、かぶせものをそのまま使用することが可能です。
Q. 手術当日に食事は可能ですか?
A.All on 4では1本喪失すると土台が3本になってしまうため、そのまま維持することは難しいです。そのため、再度インプラントを入れ直し、かぶせものも当日も食事は可能ですが、お豆腐やお粥などかなり柔らかいものに限ります。
Q.骨が少なく他院でインプラント治療を断られたことがあるのですが、All on 4、All on 6の治療は可能ですか?
A.骨が少なくても、骨を足す手術を行うとインプラントを入れられるようになる患者様は多いです。実際に当院では、他院で断られた患者様を治療したケースも数多くあります。
Q.骨All on 4、All on 6の手術時間はどれくらいですか?
A.インプラントの手術時間は1〜2時間程度です。当日に仮歯まで入れる場合は手術後さらに2~3時間ほどかかります。









